The Yin Yan 『Easy In Your Company』LP 1977年作

今日は、とりわけ素敵なアルバムをご紹介しましょう!クラブ・サーキットで一世を風靡し

た実力派シンガーSayers夫妻による自主制作盤です。香港出身の旦那Chrisさんは、同じア

ジア人とは思えない程のスウィートなハイトーン・ヴォイスの持ち主で、どんな曲でも見事

に歌い上げる歌唱力は非凡なものがあり、『Mr.カバー・ソング』と呼ばれたDonny

Osmondを彷彿させます。唯一作となったこのアルバムでは、妻のBarbaraさんとヴォーカ

ルを分け合ったり、共にハモったりと息のあった歌唱が大変素晴らしく、さらに全編通して

ソフトなサウンドが楽しめる内容ですので、Soft Rockファンなら絶対押さえておきたい1枚

です。ということで、本日は2人が出会った経緯からアルバムがリリースされるまでの話を含

め、アルバムの紹介をさせて頂きます。

The Yin Yan Duoの結成からアルバム制作に至るまで

Except You」「Stranger To Love」「No One Can Love You The Way I Do」などのヒ

ットで60年代後半に台頭した香港のポップ・グループ「The Mod East」。ファンのハート

を鷲掴みにしたのは紛れもないスウィートな歌声のリード・シンガーChris Sayersでした。

  

正にグループの人気絶頂という時期に、彼は家庭の事情で1968年にオーストラリアのシドニ

ーへ止む無く移民することになりました。シドニーではシンガーとしてビッグになろうとい

う野望は露程も思っていなく、地道に働くつもりでしたので、彼にとって香港を離れるとい

うのは、バンドを脱退するだけでなく、華々しいショウビズの世界からも離れることを意味

していました。

調度その頃シドニーでは、ポップ・グループ「Barbara & The Sweet Apple」のシンガーが

1人脱退して、新たなシンガーを探しておりました。そんなある日、ベース・プレイヤーの

Paul Youngは、新聞で香港のバンドThe Mod Eastのリード・シンガーChris Sayersがシド

ニーに移住するという記事をたまたま見つけ、すぐにChrisを探しに行きます。彼らがChris

の居所を探していた時、Chrisは既にシドニーに移り住み、就活を始め「Walton’s」という

  

小売店で社員として働き始めました。Chrisの居所を発見したThe Sweet Appleの面々は、

早速彼にメンバー入りの話を持ち掛けます。ただその時のリード・シンガーであった、後の

妻になるシドニー生まれのBarbara Ann Fongは、Chrisの加入に乗り気ではなかったそうで

  

す。というのも、前にいたシンガーのせいで彼女の立ち位置、居場所を窮屈に感じていたか

らです。結局メンバーに加わったChrisは、その後3年に渡ってハウスパーティー、クラブな

どで彼らと共に演奏をして音楽活動を続けていました。ある日、他のメンバーはもっとヘビ

ーなRockを演りたいと訴えましたが、看板2人はイージーリスニング系のポップ・ソングが

自分たちのスウィートな歌声に合っているのだと主張します。結局、メンバー内の方向性の

不一致によりあえなく解散。残ったChrisとBarbaraは、当時オーストラリアで大人気だった

ダンスやバンド演奏、ショーなど楽しむクラブに目を付けました。

彼らの住んでいたNew South Wales州だけでも2000を超えるミュージック・クラブが存在

しており恰好のビジネスチャンスでした。そして1974年に「The Yin Yan Duo」としてオー

ストラリアで最も名高い中国系のクラブ『The Mandarin Club』でデヴューを果たします。

彼らは中国の血筋を引くことを一目で分かるように、東洋の印象を残す名前にしたかったと

のことで「The Yin Yan Duo」と名乗ることになりましたが、初めは「The Red

Lanterns」とか「The Green Jade」などの名を思いついたものの、どれも中国料理店の様

な名前だったので却下したそうです。ちなみに「Yin Yan」とは、漢字にすると「陰陽」。

つまり陰陽は相反する2つの性質に分類する言葉で、このデュオに至っては「男女」を意味し

ています。最初期のステージでは、イメージし易い様に派手な中国衣装を身に纏い歌ってお

りました。あまりに珍しい名前とパフォーマンスだったので観客を惹き付けるにはかなり有

効だったそうです。オージーにとっては物珍しいステージであったのですぐに彼らの名が知

れ渡る様になり大成功を納めます。その後カジノショールーム、トップホテルのキャバレー

劇場などでも歌い続けました。その時カバーしていたのは、The CarpentersやSam Cook、

Bee Gees、Barbra Streisand、Diana Rossなどなど。そしてバンコク、マニラ、香港、日

本の一流ホテルで演奏をして世界を股に掛けた活躍ぶりで、国際レベルでのツアーを続け

ました。成功したのは音楽活動だけでなく、プライベートでも彼らは1974年6月24日正式に

結婚をすることになりました。Barbaraの父親は、義理の息子になったChrisに家業を継いで

欲しかったが、彼らがオーストラリア全土に渡る勢いで人気大沸騰の状況を見て諦めたそう

です。1年経たずしてミュージシャンとして不動の地位を確立した彼らは1975年・1976年と

2年連続で「The Variety Club Award」という賞を受賞します。それを受けて制作されたの

が本盤『Easy In Your Company』になります。さらには当時の大人気番組『The

Mike Walsh Show』にも出演するなどオーストラリア全土で人気を博しました。

 



アルバム内容

今作は両面7曲ずつの全14曲の収録になります。ポップ・シンガーのデュオということで、

大半がカバー・ソングで固められ、2人のリード・シンガーの歌声を堪能するには最適なポッ

プ・ナンバーがズラリと並んでいます。相反する意味合いのアーティスト名とは裏腹に2人の

歌声はどちらも同系統のスウィート・ヴォイス。しかし対立を表す『陰陽』には、中国のシ

ンボルでもある均衡と調和という意味も含まれていて、これがChrisとBarbaraの息の合った

ハモりと掛けているそうです。

選曲についてですが、往年の定番カバーから当時のヒット曲を中心に構成されています。

ボサノヴァ、ロック、ダンス・ナンバー、さらには坂本九の歌謡曲から中国の民謡まで

バラエティに富んだ内容で聴いていてとても楽しいです。以下、収録曲になります。

Side-1

1 「Bird Of Paradise」・・・A.Larwood

2 「I Can’t Smile Without You」・・・Arnold / Martin / Morrow

3 「I Feel Fine」・・・Lennon / McCartney

4 「Put A Little Love Away」・・・Lambert / Potter

5 「Chinese Love Song」・・・Unknown

6 「Morning Side Of The Mountain」・・・Manning / Stock

7 「Paloma Blanca」・・・Bouman

Side-2

1 「Easy In Your Company」・・・Vickers

2 「As Sure As I’m Standing Here」・・・Barry Manilow

3 「What I Did For Love」・・・Hamisch

4 「Ding Dong Song」・・・Yao Ming / Tsai Ching

5 「The Way We Were」・・・Hamlish / Bergman

6 「Sukiyaki」・・・Hacidai / Nakamura

7 「All I Ever Need Is You」・・・Holliday / Reeves

気になる曲を幾つかピックアップしましょう!まずBarry Manilowのヒットでも有名な

Butterscotchの3人衆による作曲「I Can’t Smile Without You」。パートを分け合い、サビ

でハモるといった、男女デュオによくある定番パターンによる歌唱スタイル。優しく・ソフ

トに歌い上げる2人に歌声は、まるで赤ん坊に聴かす子守歌の様です。ただ、若干Chrisのヴ

ォーカルの音量が小さく、1オクターブ下を歌うBarbaraがひどく音痴に聴こえてしまいま

す。プライベート盤ならではの凡ミスなのでしょうか?4曲目「Put A Little Love Away」

はDennis LambertとBrian Potter作曲の名曲カバーです。個人的にはMaureen McGovern

のカバーが好きですが、The Yin Yanも負けてません。2章節でソロを取るChrisの歌声がと

てつもなく美しくて、思わず聴き入ってしまいます。続く「Chinese Love Song」とB面の

「Ding Dong Song」は中国民謡系のポップ・ソング。あまり聞きなれないメロディな上

、英歌詞で歌われるので余計に斬新に感じます。「Morning Side Of The Mountain」は

Donny & Marie Osmondのカバーでお馴染みの曲ですね。ヴォーカルの絡みが見事です。

B面に移りまして、冒頭タイトル曲「Easy In Your Company」は、Barbaraがメインで歌う

爽やかポップ・ナンバー。ソフトなノリの良さと、Barbaraのキュートな歌声が上手くマッ

チしていて、素晴らしいSoft Rockin’な1曲になっています。おススメです。さらに注目なの

が3曲目の極甘ポップ・チューン「What I Did For Love」。軽快なリズムに乗って奏でる

2人のユニゾンが最高に魅力的です。これも要チェック!

もしお時間があれば、全体をまとめたMix動画で視聴してみてください!

ゆいさんのおススメ

今作最大のハイライトは何といっても冒頭1曲目の「Bird Of Paradise」!!泣く子も黙る

極上ボッサのSoft Rockナンバー。出だしのフルートの入り方や歌いだしのChrisの極甘ヴォ

ーカル、そしてKaren Carpenterを思わすBararaの瑞々しい歌声まで、全てが最高過ぎ

ます!!さらには、ラララ・コーラスまで飛び出す始末。これぞ、世界遺産級の大名曲。

最後に

裏ジャケの紹介文に彼らの音楽スタイルを「Soft Rock」と称されておりました。基本は

男女2人の掛け合いや重奏のみで、濃厚なコーラスが被さるということはありませんが、優し

くふわっとしたソフトなサウンドと、甘いメロディにスウィートな歌声という組み合わせは

正にSoft Rockそのもの。ファンなら是が非でも入手すべき必聴盤です。まだ未入手の方は

急いでレコード店へ!!ゆいさんも初めてこのアルバムを聴いた時に、思わず言ってしまし

た。    『これ良いやん(Yin Yan)!!』・・・( ´,_ゝ`)プッ