The Hi-Lo’s 『Suddenly It’s The Hi-Lo’s』LP 1956年作

「歌の上手さでは僕らを超えているよ!」と、あのFour Freshmenに言わしめたモダン・ジ

ャズのコーラス・グループ。1953年~1964年の約10年間に16枚のアルバムを発表し、Rock

の台頭と時代の変化を理由に64年に解散してしまいますが、1978年に再結成して2枚の作品

を残します。1967年には、メンバーのGene PuerlingとDon Sheltonが、紅一点のBonnie

HermanとLen Dresslarを加えて4人組のジャズ系コーラス・グループ「The Singers

Unlimited」をシカゴで結成して、81年の解散までに14枚のアルバムを発表。つまり約30年

間に渡って、彼らはヴォーカル・ハーモニー1本で歌い続けたのです。彼らが築き上げた

美しいコーラス・ワークが多くのアーティストに影響を与えたのは言うまでもないでしょ

う。あのChris Dedrickも「The Singers Unlimited」のアカデミックなコーラス・スタイル

にインスパイアされたと公言されてますし、Tony Rivers率いるHarmony Grassも彼らの

コーラス・ワークを下敷きにしているのは明々白々ですよね。

さて、本日ご紹介するのは、そんなThe Hi-Lo’sがCBS、Columbia、Philipsの3つのレーベ

ルを股に掛けて制作された6枚目のアルバムです。

メンバー

Gene Puerling(リーダー):バス・バリトン・アレンジ

Clark Burroughs:テナー

Bob Morse:バリトン

Bob Strassen:バリトン

※1959年~Don Shelton:バリトン

身長は高いが声の低いBobの2人と、身長の低いが声は高いGeneとClark。その2対2の対比

からThe Hi-Lo’s(HighとLow)と命名されましが、1959年にBob Strasenが抜け、これまた

身長低めのDon Shelton(バリトン)が新たに加入したことで、3対1という形になってま

す。彼らの先輩Four Freshmenと共に新しいコーラス・スタイルを確立したグループとして

、後世に与えた影響は計り知れません。特に従来のバーバーショップ・ハーモニーというア

カペラ4部合唱からオープン・ハーモニーを取り入れ、ハモりの幅が飛躍的に伸びましたね。

Four Freshmenと違って楽器演奏を全くしない分、彼らはヴォーカル・ハーモニーに全力を

注いでおりました。ハイトーン・ヴォイスの持ち主Clarkの存在は大きく、オープン~クロ

ーズド・ハーモニーを大体にも織り交ぜた高度なテクニックをいとも容易くこなします。

ライブでのアカペラ唱法を見れば、その実力が本物だとはっきりみてとれます。



アルバム内容

今作は両面共に6曲ずつの全12曲の収録。ジャズのスタンダードからオペラ、クラシック、

映画やミュージカルからのヒット・ソングなどのカバー中心の構成になっています。

以下、収録曲です。

Side-A

1 「Swing Low , Sweet Chariot」・・・the Jubilee Singers

2 「Life Is Just A Bowl Of Cherries」・・・L. Brown / R. Henderson

3 「Deep Purple」・・・M. Parish / P. De Rose

4 「My Sugar Is So Refined」・・・Lippman / S. Dee

5 「Brahms’ Lullaby」・・・Brahms

6 「The Desert Song」・・・Hammerstein II / Harbach / Romberg

Side-B

1 「Stormy Weather」・・・Arlen / Koehler

2 「I Married An Angel」・・・Rodgers / Hart

3 「Tenderly」・・・J. Lawrence / Gross

4 「The Old Ox Road」・・・A. Johnston / Coslow

5 「Love Walked In」・・・I. Gershwin / G. Gershwin

6 「Basin Street Blues」・・・S. Williams

冒頭「Swing Low , Sweet Chariot」は、ナッシュビルの大学生グループ「The Jubilee

Singers」による黒人霊歌。パーカッションで馬の足音を表現されてます。後半部のアカペ

ラはさすが!確かTony Riversもカバーしてましたっけ?続く「Life Is Just A Bowl Of

Cherries」は今作最大のハイライト。前半はスウィンギンでメローに聴かせ、中盤からゴー

ジャスなビッグバンドで華やかに、そして後半はお得意のモダンスタイルで、まるでミュー

ジカルを思わすめくるめく展開に圧倒されます。「♪cherries!!♪」と連呼する部分は、明ら

かにKenny Rowe在籍時のHarmony Grassがコピッてます。3曲目「Deep Purple」は、

Soft Rockファンにはお馴染みNino Tempo & April Stevensのカバーで良く知られてます

ね。The Hi-Lo’sは、スローでロマンティックに歌い上げてます。個人的にはやっぱり

Donny & Marie Osmondヴァージョンが一番!「My Sugar Is So Refined」はモダンなジ

ャズ・サウンドを聴かす曲です。時折魅せるClarkのサイレンの様な金切りファルセットは、

オランダ産Soft Rockグループ「The Buffoons」に共通する部分もあります。中には苦手の

人もいるかも。続く、美しいアカペラが圧巻な「Brahms’ Lullaby」やエンディングが聴き

所のワルツ調の「The Desert Song」も見逃せない曲です。

B面に移ると、抜群のハーモニーでしっとりと聴かす「Stormy Weather」で始まります。ポ

ップでモダンな「I Married An Angel」が続き、メロー・バラード「Tenderly」では胸を突

くメロディが何とも美しく、完璧と言えるほぼアカペラ・コーラスは正に快唱!

4曲目「The Old Ox Road」も、スウィングしながらしみじみとムードを出して歌い上げま

す。再びロマンティックな「Love Walked In」を挟み、ラストはビッグ・バンドのゴージャ

スな演奏を背に、モダン・スタイルでハモる「Basin Street Blues」で幕を閉じます。

ゆいさんのおススメ

今回のアルバム紹介は、下記の動画をご覧になって頂きたいという思いもありました(拝借で

すが)。時期は、再結成時の80年代前後と思われますが、ライブで(口パクではなく)彼らの

ヴォーカル・ハーモニーを堪能できます。演奏曲は、今作に収められた「Tenderly」と

「Life Is Just A Bowl Of Cherries」。アカペラの「Tenderly」は、息を呑む美しいハーモ

ニーで観客を凍り付かせます。圧巻なのは「Life Is ~」で魅せる超絶コーラス!アカペラか

ら始まり、ミディアム・テンポで進行していきますが、その後一曲の中で様々にサウンド・

チェンジをして、圧倒的なハーモニーを聴かせてくれます。素晴らしい名演です!

ちなみに、若かりし頃はこんな感じ↓↓

最後に

レベルの高いジャズのコーラス・グループは、同じくコーラスの美しさで勝負するSoft

Rockアーティストに多大な影響を与えており、その魅力を紐解く意味でも取り上げる価値は

十分にあるのかな、と思ってます。ということで、今後もThe Hi-Lo’sやThe Singers

Unlimitedのレコード紹介をしていく予定ですので、宜しく!