The Hear And Now 『S.T.』LP

アリゾナ州の都市フェニックスを本拠地に置く著名なエンジニアJack Millerが関わった作品

の中でも、とりわけSoft Rockなサウンドを楽しめるアルバムがこちら。紅一点の女性シン

ガーを含む5人組のThe Hear And Nowは、アリゾナ・オクラホマ・コロラドなど、アメリカ

中西部を中心に、クラブ・サーキットやホテル、レストランで生演奏をして活動していま

した。詳しいクレジットがなく年代不詳ですが、聴いた限り60年代後半から70年代初期辺り

を匂わす音を出してます。洗練されたコーラス・ワークや選曲、豪華なホーン・セクション

をフィーチャーした演奏などから、元々はジャズ系のコーラス・グループだったのでしょう

。時代の流れと共に聴衆に受けそうなトレンドにも配慮して、当時のヒット・ソングをカバ

ーしていく過程でポピュラー寄りのサウンドへシフトしていき、現代で言うところのSoft

Rockなグループに生まれ変わったのではないかと睨んでいます。つまりJazzとSoft Rockが

上手くブレンドされたコーラス・グループなのです。では早速、どんな曲が収録されている

のかアルバムの内容について紹介しましょう!と、その前にバンド・メンバーとオーケスト

ラのメンバーが記載されてましたので、一応下記に載せておきます。

メンバー

Michael Eldridge・・・Piano & Vocal

Michael Dunham・・・Clarinet , Alto Sax & Vocal

Bobbie Lane・・・Tamborine & Vocal

Ron Shane・・・Bass , Guitar & Vocal

Arturo Enrico・・・Drums & Vocal

    

オーケストラ

Lou Garno・・・Tenor Sax , Flute

Richie Oropeza・・・Tenor Sax , Flute

Stephen Coffin・・・Trombone

John Shipp・・・Bass Trombone

Nadine Janzen・・・Trumpet , Flugelhorn

Dave Campbell・・・Trumpet



アルバム内容

今作は、両面共に5曲ずつの全10曲収録されてます。メンバーによるオリジナル・ソングが

2曲、ミュージカル・ソングが2曲に、Michale LeGrandのジャズ・ナンバー1曲、他は全て

The BeatlesやThe Associationなどのポピュラー・ソングをカバーしてます。彼らのハーモ

ニーは男性陣だけに耳を傾ければモロThe Association風のコーラスなんですが、紅一点の

女性が加わることでThe Pleasure FairやThe Settlersに近いコーラス・ワークに様変わりし

ます。アレンジは決して過度になり過ぎず、且つあっさりと淡泊にもならず全体的にソフト

ですが、濃厚なハーモニーは非常に美しい。特にユニゾンとハモりの使い分けが段違いに上

手く、「Watch What Happens」などが良い例。実力はモノホンみたいですね(死語?w)。

以下、収録曲になります。

Side-1

1 「Starting Here Starting Now」・・・Maltby / Shire.

2 「Watch What Happens」・・・Legrand / Gimbel

3 「Never My Love」・・・Addrisi

4 「Climbin’ Trees」・・・Michael Eldridge

5 「Beatles Medley」・・・Lennon / McCartney

Side-2

1 「Cabaret」・・・Kander / Ebb

2 「Daisies In The Field」・・・Ron Shane

3 「By The Time I Get To Phoenix」・・・Jimm Webb

4 「This Guy’s In Love With You」・・・Bacharach /David

5 「Fool On The Hill」・・・Lennon / McCartney

1曲目は自身のバンド名をタイトルに掛けた「Starting Here Starting Now」で始まります。

高速で疾走するは饒舌なベース・ラインと主張の強いホーン・サウンドが印象的。リズム・

チェンジを度々繰り返していたと思いきや、突如として演奏が鳴り止み、ほぼアカペラのコ

ーラスを披露!さらに後半にかけての濃厚なハーモニーも息を呑む美しさ。素晴らしい!

続くMichael Legrand作「Watch What Happens」は、ソフト・ボッサなメロー・ナンバ

ー。こちらも中盤辺りで巧妙なリズム・チェンジがあります。メロディは半音の上がり下が

りがサイケっぽくてスリリング。そしてスウィングする一糸乱れぬコーラスも美しい。3曲目

「Never My Love」は、オリジナルに忠実なカバーですね。5曲目の「Beatles Medley」

は、「When I’m 64」「Your Mother Should Know」「With A Little Help From My

Friends」を順に歌い最後はワン・フレーズずつ織り交ぜていくスタイル。

B面に移りましょう。いきなり軽快にスウィングする「Cabaret」で幕開けします。この疾走

感は本当にタマラないですね~。こちらも突如スローダウンし当意即妙に男女の掛け合いへ

、そして再び疾走!と若干慌ただしいですがノリの良いジャズ・サウンドに心もウキウキで

す。2曲目はメンバーによるオリジナル・ナンバー「Daisies In The Field」。ソフト&ムー

ディーな1曲。中盤のスキャット・コーラスが良いですね。

続くJimm Webb作「By The Time I Get To Phoenix」は、今作で唯一長尺の6分を超える

曲。全体コーラスの後に女性のソロ・ヴォーカルが堪能できます。ここでの彼女の歌唱がや

けにジャジーで美しい。4曲目Bacharachの「This Guy’s In Love With You」も悪くないカ

バー。時折ジャジーなアレンジも見せてくれます。ラストには再びThe Beatlesのカバー

「Fool On The Hill」。ロリータ・ヴォイスの女性ソロパートが聴き所ですね。そして間奏

のピアノも素晴らしい。エンディングはやはりコーラスで締めてくれます。

こうしてアルバムを通して聴き直してみると、ライブでもフェイド・アウトするBay City

Rollersとは違って、エンディングでしっかりと締めて終わらせる「カット・アウト法」を全

曲で施しており、その辺は流石ライブ・バンドだけあるな、という印象。

さぁ、では全体のMix動画で視聴してみましょう!!

ゆいさんのおススメ

Side-1の4曲目に収録されたフラワーポップなSoft Rockチューン「Climbin’ Trees」。

跳ねるポップなメロディや可愛らしくブライトな歌詞は、聴いているだけで心地よくハッ

ピーな気持ちになれます。中盤ではお決まりのパパパ・コーラスも。最高峰レベルの逸品

に仕上がってますね。

最後に

ビックリする程、捨て曲がない上に「Climbin’ Trees」や「Watch What Happens」などの

名曲が収録されているので、Soft Rockファンであれば絶対入手しておきたいところです

が、かなりレア度が高く上級者向けなので、地道に探すしかなさそうですね。

幸運を祈ってます!