The Billy Van Singers 『Polydor Proudly Presents』LP 1968年作

風刺作家、コメディアン、歌手、俳優など、マルチな活躍で約1000を超えるテレビ・プログ

ラムに名を残してきたBilly Van。そんな業界きっての大御所と言える彼が、CTL界隈で名高

い重要人物を招集して結成したのがThe Billy Van Singers。彼らの1st Albumに当たる今作

は、カナダ産Soft Rockの最高峰の名盤として、コーラス・マニアのなかでは人気の高い1枚

でもあります。せっかくですので、Billy Vanの経歴や今作を発表するまでの派生作品なども

含めて、ご紹介します!

Billy Vanについて

  

カナダのオンタリオ州トロント出身のWilliam Allan Van EveraことBilly Van。彼の最初の

音楽活動は、Everaファミリーの兄弟4人で結成したThe Van Evera Brothers。

その後、本格的にエンターテイナーとしての道に進むために、高校2年生(11th Grade)の時

に学校を中途退学して、Doo WopグループのThe Billy Van Fourを結成します。メンバーに

  

は、後の妻になるPatty Brooksもいました。彼女はPatty Van Everaという名でThe Mutual

Patty Van Evera

UnderstandingやThe Laurie Bower Singersなどでコーラス隊のメンバーとして活躍しま

す。The Billy Van Fourの正式メンバーは以下の通り。

Billy Van Patty Brooks Jack Northmore Les Leigh

1961年リリースの『The Last Sunrise / I Miss You』が、彼らのデヴュー作。

Johnny Cowell Quartetをバックに吹き込んだシングルで、この時点で既に完成された

美しいコーラスを披露しておりますね。

Billy Van Four 『The Last Sunrise』

1964年に『Sound Approach / Let Esso Put A Tiger In Your Tank』

1966年にはTommy Commonの1st Album『Tommy Common Sings』のバッキング・コー

ラスで参加をしております。

Tommy Common『Sings』

1967年に『CBC Song Market featuring Kiss The Wind』というコンピ・シリーズに2曲

だけヴォーカルを披露してます。こちらは、別記事で紹介します。

同年、Billy Van名義で『Canada Observed』というアルバムをリリース。こちらは、

Billy Van『Canada Observed』

彼のコメディアンとしての一角に当たるもので、音楽ではなくコミカル系の朗読レコードの

様です。恐らく当時流行っていたラジオコメディものだと思いますが、ジャケットを見る限

り、童話や子供のためのお話ストーリーの可能性もありますね。同年にリリースされたシン

グルでは、片面のみですが1曲収録されてます。

Billy Van 『Centennial Polka』

A面「Fêtons, Fêtons, Fêtons」Jacques Michel

B面「Centennial Polka」Billy Van

※ちなみにオーケストラはBen McPeekが担当。

そしてThe Billy Van Singersの結成のきっかけとなったテレビアニメシリーズ『スパイダー

マン』のオープニング・テーマ曲「Spider-Man Theme」。この作品にはThe Billy Van

Singersに参加する面々だけでなく、The Laurie Bowers Singersのコーラス隊の常連メン

バーのBill MisenerとStephanie Taylorも参加しております。

そういった経緯を経て、ようやく1968年にThe Billy Van Singersが結成され、本盤の

リリースに至ります。

コーラス隊のメンバー

表ジャケで見て取れるように、メンバーは全部で9人。残念ながらクレジットがないために

正確な参加者は分かりません。ただ、確定で分かっているメンバーもいるので下記に列挙

しました(括弧で括ってある人物に関しては顔写真からの推測です)。

William Allan Van Evera (Billy Van)

Patty Brooks

Les Leigh

Vern Kennedy

Kathy Collier

(Jack Northmore)

(Rhonda Silver)

残り2人は不明です┐(´д`)┌

※収録風景↓

  



アルバム内容

今作は片面6曲ずつの全12曲の収録になっております。サウンドは、9人という大所帯ながら

合唱団ぽくなく、タイトでまとまりのあるコーラス&ハーモニーです。スキャットやヴォー

カリーズも難なくこなす、かなりハイレベルで厚みのあるコーラスが特徴的。

楽曲に関しては、【カナダ人の、カナダ人による、カナダ人のためのアルバム】というコン

セプトに従って、全曲カナダ産の曲になってます。基本的にはコーラスに重きを置いた楽曲

構成で、そこにワルツ系のジャズやボサノヴァ、若干ロッキーなものからオーソドックスな

スタンダード・バラードなど様々なスタイルでSoft Rockを繰り広げています。

以下収録曲です。

Side-1

1 「I’m Laughin’」

2 「You Don’t Really Know」

3 「Why Oh Why」

4 「There Must Be A Reason」

5 「You’ve Got The World By The Tail

6 「You’re Wrong」

Side-2

1 「You’re Hangin’ Me Up

2 「Where Were You」

3 「How Can Anyone

4 「Four Seasons」

5 「Tammy’s Gone

6 「Am I A Fool」

まず冒頭の「I’m Laughin’」に癒されます。ソフト志向で洗練されたコーラスが楽しめて最

高の出だしと言えます。人数からすると、やや軟(やわ)で地味な感じもありますが、ソフト

&メローなこの感触がアルバムの醍醐味になっています。そして3曲目「Why Oh Why」も

素敵ですね。抑揚のある展開を、まるで風の様な吹き荒れるコーラスが聴き所。4曲目

「There Must Be A Reason」のポップ・バラードも味わい深くSoftなタッチが実に良い!

6曲目「You’re Wrong」は、今作で唯一エレキ・ギターが鳴り響くロック・ナンバー。コー

ラス隊も負けじとパパパ・コーラスで応戦して、サビではグイグイ分厚いコーラスも飛び出

します。B面に入りると、これまた冒頭でSoftなサウンドが満開です。簡素にして奥行きのあ

る感じが何とも良いです。2曲目 「Where Were You」は、ほのぼの感満点のSoft Rock。

そしてラストのバラード3連発が何しろ凄いです。爽やかバラード「Four Seasons」~暗く

ノスタルジックな「Tammy’s Gone」~エモーショナルで壮大な「Am I A Fool」。どれも

緻密に計算されたコーラス・ワークが素晴らしいです。特に「Am I A Fool」では、カナダ産

Soft Rockの伝家の宝刀とも言える男女混声の一糸乱れぬ美しいコーラスを披露し圧倒され

ます。

ゆいさんのおススメ

まずSide-2の3曲目の「How Can Anyone」。ボサノヴァのSoftなサウンドに乗せて、磨き

のかかった男女混声コーラスが、掛合い、ハモり、そしてスキャットで魅せてくれます。

1分10秒からのパパパ・コーラスが最高に爽快過ぎて即死です。

Side-1の5曲目「You’ve Got The World By The Tail」。

ジャジーなワルツ・リズムとキャッチーなメロディが最高ですが、それ以上に素晴らしいの

が、度肝を抜かれる完璧なコーラス&ハーモニー!正にSoft Rockの頂点に達する

世界遺産級の大名曲。Soft Rockファンの御仁なら、間違いなくノックアウトでしょう。

最後に

個人的にも大好きな盤です。カナダ産Soft Rockが好きな方なら、絶対気に入ると思います

ので、発掘してみてください。ちなみに数年前にSuperOldiesから数量限定でCD化されま

したが、即完売してしまったみたいですよ。では、良い一日を!