Steve ‘N’ Leila 『S.T.』LP 1972年作

本日はUliano夫妻によるSoft Rockの名盤をご紹介します。一昔前まではマニア向けのニッ

チ派生作品として、知る人ぞ知る「隠れた名盤」と銘打たれてましたが、今では大分メジャ

ーになってきましたね。やはりネット社会がもたらした恩恵なのでしょうか、マイナー盤も

広く知れ渡りつつあるこの御時世。そういった風潮に乗っかって、今までレア盤とされてき

た名盤を多くの方々が手軽に入手できるようになれば、素晴らしいことですね。発掘そのも

のの楽しみがなくなってはしまうというジレンマはありますが・・・。

今作で、まず気になるのがジャケット。遠くから見ると写真の様に見え、近くから見ると

絵で描いた様に見える仕様になってます。一体どんなトリックなんでしょう・・・?自身の

髪色に合わせたビロードの様な生地の服を着ているLeilaさんと、ややヒカキン似の厚い眼鏡

を掛けているSteveさん。このUliano夫妻の上品な笑顔が何とも微笑ましいですね。イタリ

ア系の血を引く夫のSteve Ulianoさんは、米・ニューヨーク州ロングアイランド出身で、ジ

ャズ畑のローカル・シーンでシンガー兼ピアニストとして活動していた方で、The Graphic

Imageというグループのシングルでアレンジャーで抜擢されたり、Dee Lawsonの1959年作

『Round Midnight』にビッグバンドの一員(Pianist)として参加してます。奥様のLeilaさん

はシンガー兼ピアノ調律師として働かれていたそうです。

さぁ、ではどうして今作が名盤と呼ばれるのかを考察しながら楽曲の紹介をしていきましょ

う!視聴も出来ますので興味のある方は是非。

名盤の理由

Soft Rockの名盤と呼ばれる原因は何なのでしょうか?ゆいさん的な考えでは、

・ホームメイド感の強い簡素な音作り

・決して媚びることのない2人の物腰弱いSoftなヴォーカル

・対立法を駆使したハーモニー

・Soft Rockな選曲

・ジャズ、ボサノヴァという最強の組み合わせ

上記の5つの要素が見事に組み合わさることで、素敵な音楽が出来上がっているのではないか

と思っています。特に人肌の温もりを感じるサウンド・メイクは、ジャンルという垣根を超

えて多くの音楽リスナーが魅力的に感じる部分なのではないでしょうか?例えば、野外録音

で話題になったHeron。彼らのサウンドにかなり近い質感を兼ね備えていて、機械的なサウ

ンドが苦手な方には良いかもしれませんね。



アルバム内容

今作は、両面6曲ずつの全12曲の収録になってます。B面ラストの1曲はSteveさんによる自

作曲で、他11曲は全てカバー・ソングになります。全曲2人のヴォーカルが楽しめる内容に

なっていて、イントロで主旋律を交互に歌い合いサビのでハモる曲と、終始重奏でのユニゾ

ンとハモりで聴かす曲の2パターンが基本スタンス。サウンドは、選曲でお分かりの通りモロ

Soft Rockなんですが、間奏の部分だけを切り取って聴くと、イージーリスニング系のラウ

ンジ・ミュージックなんです。自主制作盤ということから察するに、クラブやショーで静か

な演奏をバックに歌っていた2人が、聴衆のために本盤を制作しステージ閉演後に販売してい

たのではないでしょうか?あくまで憶測ですけども、実際にこういった営業タイプのミュー

ジシャンは結構多かったらしいですよ。そういった自主制作盤は、サイン入りの物が多いん

ですよね。で、話は逸れてしまいましたが、2人のヴォーカル・ハーモニーだけではなく、シ

ンプルでスタイリッシュな演奏も聴き応えありますので、合わせて聴いて頂ければより楽し

めると思います。以下、収録曲になります。

Side-1

1 「The Face I Love」・・・Valle / Pingarilho

2 「Close To You」・・・Bacharach / David

3 「If」・・・David Gates

4 「Spanish Eyes」・・・Singleton / Snyder / Kaempfert

5 「Scarborough Fair」・・・Simon / Garfunkel

6 「With A Little Help From My Friends」・・・Lennon / McCartney

Side-2

1 「I Found Love」・・・Chris Dedrick

2 「Come Saturday Morning」・・・Karlin / D.Previn

3 「Someone To Light Up My Life」・・・Jobim /Moraes

4 「Windmills of Your Mind」・・・LeGrand / Bergman

5 「Girl Talk」・・・Hefti / Troop

6 「You Made A Lover Out Of Me」・・・Steve Uliano

Marcos Valle作曲で知られるクール・ボッサな名曲「The Face I Love」で幕を開けます。

Astrud Gilbertoと同様の英詩版カバーです。スタイリッシュ且つ簡素な演奏に乗って甘く

ソフトに歌い上げる2人。0:48秒~はThe Free Designを思わすハーモニー・テクニックを

披露。ウィスパー系の控えめなヴォーカルがとりわけ美しく、Soft Rockの名曲に相応しい

好カバーに仕上がってます。続くBacharach作The Carpentersのカバー「Close To You」

も、クール・ジャズにアレンジされています。どこかノスタルジーな雰囲気や線の細いヴォ

ーカルが味わい深いですね。ラウンジ系の演奏含めかなりイケます。3曲目はBreadのカバー

「If」。こちらもミニマムな演奏が彼らのヴォーカル・ハーモニーを上手く引き立ててます

ね。Al Martinoのラテン系ジャジーな「Spanish Eyes」のカバーも良いですね。これは、ヴ

ォーカル以上に間奏のエレピ・ソロが素晴らしいです。そして美麗でしなやかなに聴かす

「Scarborough Fair」を挟み、ラストはロジャニコもカバーしたThe Beatlesの「With A

Little Help From My Friends」は、Soft Rock仕立てのアレンジが効果的な好カバー。

B面に移り、のっけからThe Free Designのカバー「I Found Love」で驚かされます。小気

味良い演奏に乗せ高らかに歌い上げてます。甘く柔らかい、この雰囲気が何と言えず最高!

続くThe Sandpipersのカバー「Come Saturday Morning」は、ややバロック調を意識した

作りで、中盤のオーバーダブによるハーモニーが聴き所です。ソフト&クールな

「Windmills of Your Mind」が続き、5曲目Neal Hefti作の「Girl Talk」は、しっとり感満点

なスロージャズ。美しいメロディに、滑らかな歌唱、そしてSteveのムーディーなピアノ・

ソロまで本当に良いですね~。そして今作ラストを飾るのは、唯一のオリジナル作となった

キラー・ジャズなグルーヴィー・チューン「You Made A Lover Out Of Me」。クラブDJ向

きな曲としてかなり人気らしいですよ。テンポ良いラテン・リズムと息ピッタシのUliano夫

妻によるヴォーカル・ハーモニーが絶妙にマッチしてます。最後はスパッとキメてくれまし

たね!

ゆいさんのおススメ

今作のハイライトはSide-2の3曲目に収録されたジャズ・ボッサ「Someone To Light Up

My Life」。出だしは「バドゥバドゥバ」というスキャットで静かに始まります。優しく語る

様な2人のヴォーカル&ハーモニーは鳥肌もの。間奏の癒し系ピアノ・ソロも絶品です!

最後

Jackie & Royにソフトな歌い方をさせたら、こんな感じのアルバムになるかもしれません。

Soft Rockファンであれば、収録曲を見るだけでワクワクする楽しいカバー曲が満載なので

おススメです。相場は高いけど、よく出回っているので苦労せずにGetできると思います。

視聴でお気に召したら是非探してみてください。では!