Miki Antony 『City Of The Angels』LP 1978年作

ブリティッシュ・ポップの独特なエッセンスを持つアーティストの一人として、忘れてはい

けないのがMiki Antony。様々なアーティストに楽曲提供をして、数多くのヒット曲を放って

きた彼はコンポーザーのイメージが強いですが、1978年には自身初となる唯一のSolo

Album『City Of The Angels』を発表しております。Mark Wirtzの影響下にある非凡なソン

グライティング能力が遺憾なく発揮された素晴らしい内容で、年代的にもUKハーモニー・ミ

ュージックの真只中ということも相俟って、フレッシュなコーラス・ハーモニーが満載なん

です!流通量が少ないために隠れた名盤と銘を打たれてしまいましたが、少数の方にしか聴

くことが出来ないのはあまりにも勿体なさすぎます ヽ(`⌒´メ)ノ

ということで、本日は彼のアルバムと、せっかくなので彼の経歴もサクッと紹介させて頂き

ましょう!

Miki Antonyについて

Miki Antony

イングランド・サフォーク州出身のMichael Antony Derrickは、英国のシンガー、作曲家、

プロデューサーとして1968年から1985年までの約20年間活動していたミュージシャンで

す。彼の最初の音楽キャリアとなるのは、英国が誇るエンターテイナー兼コメディアン

Bob Monkhouseのシングル『I Remember Natalie / In My Dream World』。Mikiは作曲

デヴュー作となるA面の作曲を担当します。B面の作曲からアレンジ・プロデュースをした

のは奇才Mark Wirtz。両面聴き比べると面白いですね。王道ポップ・スタイルのMiki作と

ほのぼのポップ・メローのMark作。そしてMikiにとって処女作でMarkと出会ったことが、

今後の彼の作曲家としての作風・作曲スタイルに大きな変化をもたらします。

Mark Wirtz  

その後Mikiは、正式な名義変更の手続きをします。Deed Pollと呼ばれる捺印証書を要する

法的な契約で行われました。というのも「Miki Antony」という名は、英国男性シンガー

J. Vincent Edwardsと英国SSWのKris Ife、そしてMikiを含めた3人による仮名の共同作曲

名義でした。例えば、看板3人組の共作曲をL. Ransfordと統一したThe Holliesと同様です

ね。それをMikiは、将来の作曲家としての道を見据えて、自分一人だけが使用できるように

正式に契約交わしたのです(最初から個人名義にしてれば良かったのに・・・)。著作権にお

ける印税収入問題は、当時度々取り上げられていたらしく、今後の彼の活躍を見れば正しい

行動だったと言えます。

その手続きが済み、彼は「Miki Antony(個人)」としてキャリアを再開させます。初期には

Mark Wirtz関連の作品が多く、作曲家としてはMarkが手掛けたバンドThe Matchmakersの

   

1970年作『Bubble Gum A Gogo』で自作曲を5曲も提供します。歌手としては「Miki」名

義で1969年に2枚のシングルを残しますが、どちらもMarkが作曲・プロデュースで参加して

おります。その後、1972年にBen Findonと「Crackers」というグループを結成して2枚の

シングルを発表。第一作目の「Jack-A-Dandy」はマイナーヒットだったものの南米チリと

オーストラリアで何とNo.1ヒットを記録。さらにRoger CookとRoger Greenawayによる

プロデュースでリリースされた1972年『If It Wasn’t For~ /Try It You’ll Like It 』と翌年

1973年の『Another Without You Day / Maggie Was Right』がUKチャートTop 30のヒッ

トとなります(どちらもGreenaway / Cookの共作)。その後も複数のレーベルを股に掛けな

がらコンスタントにシングルを発表し続け、並行してCraig ScottやThe 5th Dimension、

The Nolans、The Congregationなどのアーティストに自作曲を提供したり、The Goodies

やMary Mason、Pat McGlynn’s Scottiesなどの作品のプロデュースなど、休みなく仕事を

こなしていきます。1975年にはライブラリー物も手掛けることになりブライトンの

「REGENCY LINE」から2枚のアルバムをリリース。1枚目はDave RowberryとBarry Blue

の3人で制作された『Rock & Roll』。そしてほぼ同時期に作られた2枚目は、Barry Blueと

Tom Parker の3人での『Disco Happening』。どちらもタイトル通りのサウンドを

  

収めたインスト・アルバムです。3年後の1978年に、UKライブラリー物の優良レーベル

「Bruton Music」から2枚共再発されております。この2枚のアルバムで制作された楽曲群

は、英国の人気TVコメディー『The Benny Hill Show』や『The Avengers』という番組で

 

使用されました。そんな多忙を極めていた時期に満を持して制作されたのが、彼の唯一の

Solo Album『City Of The Angels』。このアルバムに収録された多くの曲は他のアーティス

トにカバーされており、比較して聴いてみると面白いですよ。このアルバム発表後、楽曲

提供とプロデュースなど裏方の仕事をメインに注力していき、並行して続けていたシンガー

としての活動は全くなくなります。もしかしたら二足わらじの活動に限界を感じ、区切りを

付けるためにアルバムが制作されたのかもしれません。音楽業界を離れた後は、デベロッパ

ー(不動産開発業者)として働き、成功を収めたそうです。



アルバム内容

今作は両面共に6曲ずつの全12曲の収録で、全曲Miki AntonyとNew ZealandのFolk系SSW

のDave Jordanによる共作です。ミディアム~スロー系のバラード・ナンバーが半数以上を

占めています。アップ・テンポな曲ではディスコ調の曲などもあり、AORぽい作りではあり

ますが、Mikiの物腰弱いヴォーカルや爽やかなコーラス、SoftなアレンジからはむしろSoft

Rock寄りのサウンドになっています。以下収録曲になります。

Side-1

1 「If You’ve Never Had The Chance To Fall In Love」

2 「Hey Friend」

3 「Stella」

4 「Going Through The Motions」

5 「The Manner To Which You’re Accustomed」

6 「Can’t Get You (Out Of My Mind)」

Side-2

1 「C’est La Vie Michelle」

2 「Well Meaning Friends」

3 「Never Turn Away From Love」

4 「Turn Around」

5 「Making Love On The Late Show」

6 「It’s Funny」

まずシングル・カットされた冒頭のミディアム・バラード「If You’ve Never~」が秀逸の出

来。英国臭いメロディとソフト&メローなサウンドが見事に絡み合い、素敵な1曲に仕上が

ってます。Soft Rockなフィーリングに満ちていておススメです。

続く「Hey Friend」は、ゆいさんの一押しナンバー。Chris Rainbowの「Gotta Song」を

彷彿させる出だしの音作りやアコギの音色、さらに意識したのか(?)Mikiのヴォーカルもそれ

となくChrisに近い歌い方で、Chris Rainbow好きにはたまらない1曲になっています。

その他で気になる曲と言えば、女性コーラスを配したキャッチーなディスコ・ナンバー

「Going Through The Motions」「Making Love On The Late Show」やヒットしたミデ

ィアム・ポップバラード「Can’t Get You (Out Of My Mind)」、爽やかソフトポップな

「C’est La Vie Michelle」ポップ・カントリー「Turn Around」などなど。どの曲も随所で

Mikiの個性的な作曲センスが光ってます。

シングルについて

「Miki」と「Miki Antony」名義で1969年から1978年までに計16枚のシングルをリリースし

ております。初期の頃はややバブルガム・ポップ寄りのサウンドで、その後はグラム・ロッ

ク系のサウンドもあるものの基本的にはキャッチーでメロディックな曲が志向の柱となって

います。私は7~8割程入手しましたが、その中でもSoft Rockファンにおススメしたいの

が、ヒットした1972年作の『If It Wasn’t For~ /Try It You’ll Like It 』。Cook &

GreenawayのA面はThe HolliesもカバーしたキャッチーなSoft Rockナンバー。Mikiヴァー

ジョンは、テンポを下げスチール・ギターを加わっており、カントリー調のメロー・ポップ

な作風になってます。優しく語り掛ける様なMikiのヴォーカルと、甘くメローなサウンドに

ついウットリ。

B面はMikiのオリジナル。大サビのキレのあるメロディや堅いヴォーカル、そして聴き手を

ちょっと馬鹿にした様なサウンドがモロMark Wirtzぽいですね。Chris Rainbowぽくもあり

ますが、どちらにせよこの信じられない程のポップ・フィーリングは最高です。

他のシングルもどれもキャッチーなものが多く、可もなく不可もなくといった印象です。

まだ未入手の盤が幾つかありますので入手出来次第、更新していく予定です。

最後に

Mikiのペンによるヒット曲は、オーソドックスな王道ポップ系が多いですけど、中には英国

産特有のメロディや一筋縄ではいかないクセの強い構成・アレンジがあり、初見の方には彼

の良さ・魅力が理解しづらい部分もあるかもしれません。ただ、逆に一度ハマると抜け出せ

ない中毒性もはらんでいまして、そこはやっぱりMark Wirtz譲りの賜物なのかな?なんて

思ったりしてます。 視聴で気に入ったら、チェックしてみてください。 では!