Jury Krytiuk Orchestra & Chorus 『A Portrait Of Burt Bacharach』LP 1972年作

Soft Rockファンの間ではバカラック・カバーの傑作盤と知られる1枚。あのBarbara Gryfe

の大名盤『What The World Needs Now』でエグゼクティブ・プロデューサーとジャケット

・デザインを担当したJury Krytiukが、同じくカナダ人のフォーク・シンガーStompin’ Tom

Connorsと共に立ち上げたレーベル「Cynda Records」からリリースした作品です。親元で

ある「Boot Records」も彼らがトロントで共同設立したレコード会社です。カナダ人による

カナダ・レーベルからのリリースなので、「カナダ産Soft Rock」と思いたいところです

が、実情は違うようです。今作発表の1年前にOrchestra Fred Forsterなる名義で同内容の

物がスペインでリリースされています。で、このFred Forsterは、ドイツの良質なライブラ

  

リー・レーベル「Golden Ring Records」から72年作『Enjoy Yourself』や『Charming』

などスキャット物のSoft Rock作品でよく知られた方。何故ドイツかというと、彼のオーケ

ストラを全般的に担っているのがドイツ人のWerner Drexlerだからです。彼は映画音楽やイ

ージーリスニング系の指揮、アレンジ、作曲、ピアニストとして活躍するミュージシャンで

「Golden Ring Records」と傍系レーベルである「Happy Record」から自身の率いたオー

ケストラで、アルバムを幾つかリリースしております。

   

一体、何が原因で、どんな経緯でJuryが本人名義でリリースしたのか。どうやらFredとの関

りが大きなポイントになってきそうですが、とどのつまりWernerを率いたFredがJury名義

でリリースされたのが本盤なのです。とてもヤヤコシイですよね. (○´・Д・) ?

何はともあれ、バカラックの曲が好きで、しかもスキャットが好きな方には打って付けの作

品であることには変わりありません。男女混声スキャットで綴ったバカラックの名曲群を

堪能するのにこれ以上最適なアルバムもそうそう無いでしょう!

今作と双璧を成すThe Renaissanceの73年作『Bacharach Baroque』の前衛的な作品とし

て、大変価値あるアルバムだと思います。興味のある方は下記で視聴してみてください!

73年作『Bacharach Baroque』



アルバム内容

今作は片面6曲ずつの全12曲収録されてます。タイトル通り全曲バカラック作曲のナンバー

が占めており、彼の名曲群がこれでもかと並んでいます。男女混声のスキャット物ですが、

コーラスだけがメインの内容ということではなく、スキャットはあくまでバカラックの美し

いメロディを最高の形で表現するための一ツールに過ぎず、ブラスのソロなどの演奏の見せ

場ではしっかりとボリュームを抑えて、互いの長所を生かした構成になっています。全編通

してソフト・タッチな音作りに徹底していて、アルバム全体が美しい安らぎの空気感に満ち

溢れています。これが、表ジャケでイメージできる可愛らしい世界観と見事にリンクしてい

るんです。以下、収録曲になります。

Side-1

1 「Raindrops Keep Fallin’ On My head」

2 「As Long As There’s An Apple Tree」

3 「Let Me Go To Him」

4 「I Say A Little Prayer」

5 「Paper Mache」

6 「Do You Know The Way To San Jose」

Side-2

1 「I’ll Never Fall In Love Again」

2 「Nikki」

3 「This Guy’s In Love With You」

4 「Walkin’ Backwards Down The Road」

5 「Live Again」

6 「Ten Times Forever More」

B. J. Thomasで有名な「雨に濡れても」からアルバムは幕開けします。人懐っこくてゴキゲ

ンなメロディが印象的ですね~。明快な混声コーラスがとても爽やかです。エンディングで

のリズム・チェンジがカッコ良く決まってます。続く「As Long As There’s ~」は、ロジ

ャニコ・サウンドにも通じる高らかなホーン&オーケストラとスキャットが交互に絡み合い

ながらバトンリレーを繰り返し、奏でられていきます。可憐な女性コーラスもとても美し

く、間違いなく本盤の注目の1曲。3曲目「Let Me Go To Him」は、癒しの音響で魅せるセ

ンチメンタルな世界観が幻想的で素敵です。続く「I Say A Little Prayer」と「Paper

Mache」は、どちらもヴィブラフォンとホーンの音色が非常に艶やかでNiceです。

B面は、Barbara Gryfeもカバーした「I’ll Never Fall In Love Again」で始まります。南国

サウンドを思わすマリンバ(?)やフルートの音色が効果的ですね。ダバダバ・スキャットと

の相性も良く素晴らしい!そして3曲目は、数あるアーティストにカバーされてきた「This

Guy’s In Love With You」。壮大なオーケストラと大人な演奏、そして少々控えめなスキャ

ットで織り成されています。ソフト・ミディアムな曲調の5曲目「Live Again」は、終盤に掛

けて盛り上がる濃厚なスキャットが聴き所です。

本日もアルバム全体のMix動画を作りましたので、どうぞご視聴ください!

ゆいさんのおススメ

今作のハイライトはSide-2の2曲目に収録された「Nikki」。バカラックの比類なき作曲能力

が遺憾なく発揮された1曲。ノスタルジアに溢れた心に響くメロディと、それを奏でる優雅で

上品なオーケストラ、そこに優しく吐息を吹きかけるようにスキャットが重なり合い、良質

なSoft Rockを体現しています。正に、今作の魅力が集約された会心の曲ですね。

最後に

これから入手する方には、インテリア映えするJury Krytiuk盤をおススメします。聴ければ

良い方はFred Forster盤でもいいかもしれませんが、どちらもなかなか目にしないレア物で

すので発掘はちょっと大変かも。