Jose Mari Chan 『Here & Now』LP 1976年作

亜モノSoft Rockと言ったらFrances Yip、尤雅 、Geminesse、Sharon Cunetaなど女性の

イメージが強いですよね。でも忘れちゃいけないのがフィリピンを代表する国民的シンガー

Jose Mari Chan。濃厚なコーラスこそほとんどありませんが、持ち前の作曲センスを活かし

た甘く切ないメロディとスウィート&ソフトなハイトーン・ヴォイスでステキなSoft Rock

サウンドを聴かせてくれるんです。

という訳で、本日はJose Mari Chanの経歴と何故ゆいさんが今作をチョイスしたのか、とい

うお話をさせて頂いた後にアルバム紹介をします。勿論いつも通り視聴用の動画を貼ってあ

りますので、時間ない方はスクロールして試し聴きだけでもしてみてください!

Jose Mari Chanについてと、4th Album紹介の理由

フィリピン・イロイロ市出身のJose Mari Chanは、中国系のフィリピン人。彼は歌手だけで

なく、多くのアーティストに楽曲提供するコンポーザーであり、大手製糖企業の会長兼CEO

を務めるビジネスマンでもあります。アテネオ・マニラ大学にて学士号を取得して卒業した

1967年に、地元の歌番組で歌手兼ホストとして出演。それをきっかけに、翌年の1967年に

1st Single「Afterglow」で歌手デビューを果たします。ヤマハが主催する第4回世界歌謡祭

にフィリピン代表としてノミネートされ「Can We Just Stop And Talk Awhile」が最終選考

まで進みました。彼はフィリピンでオリジナル・アルバムを4枚残して、砂糖工場の企業拡大

のために家族共々米国へ渡り、音楽活動は一旦中止して11年間ビジネスマンとして働きま

す。1986年にフィリピンに戻ってきた彼は、発売済みの4枚のアルバムから名曲を寄せ集め

、さらに新曲を加えた『A Golden Collection』をリリースして、音楽業界へカムバックを果

たします。

その後、フィリピン国内で歌手としての絶大な人気を得てテレビに出演したり、映画・テレ

ビ・CM向けに大量のジングルを作曲したりと、多忙に活動します。ラブ・ソングが好きなフ

ィリピン人の影響で、彼の作品はバラードが中心。特に米国から帰国した1986年以降の作品

はそれが顕著になりますので、そうなるとSoft Rockファンが注目すべきなのは彼が米国へ

発つ前の作品ということになります。ジングルなどは抜きにして、アルバムに関してですと

1969年~1975年の間に4枚のアルバムをリリースしております。全て聴いてみたところ、

後年に比べるとその比率は低めになりますが、やはり全体的にバラードが多め ヽ(´Д`;)ノアゥア;

まず1969年の1st Album『Deep In My Heart』はオールディーズ・ポップという作風で、

この時期はGerry MarsdenとDonny Osmondを足して2で割った様な歌声でした。

Soft Rock寄りな曲と言えばキャッチーで明るいポップ・チューン「Victim of People」で

しょうか。そして1973年の2nd Album『Can We Just Stop And Talk Awhile』では、まだ

60’s臭さは抜け切れていない感じでしたが、爽やかポップな「Mister Songwriter」がなかな

かの出来。そして1973年の3rd Album『Afterthoughts』 になるとフォーク・サウンドやバ

カラックに近いパンチの効いたポップ・チューンなど、若干サウンドに変化が表れ始めSoft

Rockなサウンドに。中でも爽快感抜群のソフト・バラード「If We Only Had More Time

Together」とPaul McCartneyを彷彿させるキレのあるポップ・チューン「Good Old

Fashioned Romance」が白眉。Soft Rockファンなら気に入ること間違いなしの素晴らしい

曲です。さぁ、こういった流れでJose Mari ChanにもSoft Rockという最良の風が吹き始め

てました。ちょうどそんなベスト・タイミングで制作されたのが、今回紹介するこの75年作

の4th Albumなんです。いつものラブ・バラードが半数を占めていたり、他ミュージシャン

のゲスト参加などもあったりで「全曲最高の~」とは言い難いですが、Soft Rock系大名曲

「Love At 30,000 Feet」の収録や、これでもかと極甘のメロディが詰め込まれたソフロ直

系の楽曲が収録されてます。掛け値なしに素晴らしい傑作盤であり、彼の数ある作品群の中

でもSoft Rock度の高さでいったら今作が一番かと思います。下記の視聴動画を試してみれ

ば、恐らく満場一致で賛成して頂けるでしょう。

※レコードのラベルには1976年と記載されてますが、公式では1975年になってました。

私が持ってるのは再発盤なのかな?

    

アルバム内容

今作はA面5曲、B面に6曲の全11曲収録。Jose Mari Chanによるオリジナル・ソングが9曲

(共作含む)。表ジャケにも書かれているように、1970年代に活躍したポップ系コーラス・グ

ループThe Ambivalent Crowdとのデュエット・ソングや、ファンキーなインスト・ナンバ

ー、フィリピンを代表する女性SSWのPilita Corralesが一人で歌いきる曲など、必ずしも

全ての曲でJose Mari Chanの歌声を堪能できるという訳ではないんです。

Jose Mari Chanが歌う曲は、ラブ・ソングが大好きなフィリピン人の国民性のおかげで(?)

バラードが多めですけども、やはりフィリピンのJimmy Webbと呼ばれるだけあって、ソン

グライティング能力は抜群に高く、安心して聴けます。が、今作の最大の聴き所は何と言っ

てもツボを押さえたアップ・テンポなSoft Rockナンバーです!数こそ少ないものの、内容

は本当に素晴らしいです。以下収録曲になります。

Side-1

1 「Intro – Love」・・・ Jose Mari Chan

2 「Love At 30,000 Feet」・・・ Jose Mari Chan

3 「Afraid For Love To Fade」・・・ Jose Mari Chan

4 「Here And Now」・・・ Jose Mari Chan with The Ambivalent Crowd

5 「Pagibig Ay Malimit Mabigo」・・・Pilita Corrales

Side-2

1 「Love And Music」・・・ Jose Mari Chan

2 「Come , Get Away」・・・ Jose Mari Chan

3 「Sing In Harmony」・・・ Jose Mari Chan

4 「Ang Nobya Kong Seksi」・・・Apolinario Hiking Society

5 「What Is A Sweetheart」・・・ Jose Mari Chan

6 「Salsa Flight : Manila To Moscow」・・・No Credit




オープニングは短めのイントロから始まります。外人さんが彼を紹介してから歌に入りま

す。楽曲内容は1分足らずと短めですども、メロディは良く聴き易いミディアム・メローバラ

ードな1曲です。

そして2曲目の彼の代表曲でもある「Love At 30,000 Feet」は、フィリピン航空のテーマ・

ソング向けに作られたジングル。完全にLove Unlimited Orchestra「Love’s Theme」をモ

チーフにした作品で、ワウペダルを使用したカッティング音とかBarry Whiteらしい美しい

ストリングスなど、堂々とパクってしまう潔さに笑えますが、この人が現代まで多くのファ

ンに愛され続けるミュージシャンなのは、自身の個性を強調しつつもこういった時代の足並

みに揃えたオリジナル・ソングを作り続けたところにあると思うんです。この曲が正にその

典型で、「Love’s Theme」をベースにしながらも、Bob Azzamの「Super Air Service

やBrian Hylandの「When You Touch Me」と同路線の高揚感あるオリジナルメロディを加

えることで、見事なSoft Rockサウンドを作り上げているんです。それにしても何度聴いて

もこの曲は素晴らしいですね。

3曲目の「Afraid For Love To Fade」もベスト盤に収録され、CD化もされてるので知る方

も多いでしょう。彼の十八番と言えるメロー・バラードですね。少々サビの盛り上がりに欠

ける部分はありますけどもトロける程の甘いヴォーカルにウットリ聴き入ってしまいます。

続く「Here And Now」は、The Ambivalent Crowdのコーラス隊からの3名とJose Mari

Chanが交互にヴォーカルを分け合いながら歌うタイプの曲。可もなく不可もなくといった印

象。A面ラストはPilita Corralesが一人で歌うバラード。何故彼女のソロ作がこのアルバムに

収録されたのでしょうか?フィリピンの映画『Tatlong kasalanan』のテーマ・ソングら

しいのですけど、Jose Mari Chanと何か関係があるのかな?

B面に入ると名曲が続きます。まず冒頭の甘いポップ・バラード「Love And Music」に始ま

り、ソフロ・ファンが好みそうなアップ・テンポなポップ・チューン「Come , Get Away」

に続き、極めつけが3曲目の「Sing In Harmony」。間違いなく今作のベスト・テイクでし

ょう。バックの演奏は「Love At 30,000 Feet」と同じですけども、こちらは如何にも日本

人受けしそうな旋律とコード進行で、はち切れんばかりの甘~いポップなメロディが炸裂。

「Love’s Theme」で有名なワウワウ・ギターの音色が小気味よいグルーヴ感を生み、さら

に控えめで甘くソフトなヴォーカルが上手く絡み合い、信じ難い程のポップ・フィーリング

に溢れています。特に1:03秒から魅せる大サビの展開に失神者が続出しそう・・・。

4曲目「Ang Nobya Kong Seksi」は可愛らしいキャッチーなポップ・ソング。このメロデ

ィ・・・ついLummurを思い出してしまった。続く「What Is A Sweetheart」は、お得意の

メロー・バラード。そして最後は今作唯一のインスト・ナンバー。ファンキーなダンス・ナ

ンバーですね。どちらかと言うとフロア向き?この1曲があるだけでアルバムの印象が大分変

ってきます。では、ここでアルバム全体のMix動画をご視聴ください!!

最後に

彼のオリジナル・アルバムも大変素晴らしいですが、彼が作曲したジングルを寄せ集めた

『Strictly Commercial The Jingles Collection』というコンピCDが1997年にリリースされ

てまして、そちらもSoft Rock直系の良質な曲が満載ですのでおススメします。明日紹介し

ますので、お楽しみに!

74曲も収録された大ボリューム!

で、今作の入手方法ですが、Soft Rock発掘隊の中では最難関の1枚とも言われているほど、

非常にレア度が高いため入手するのは大変だと思います。と言いながらも、先日フィリピン

で24,500ペソ(約5万円)売られてるのを発見しました。ちょいと値が張りますが,10万越えし

てるロジャニコの『We’ve Only Just Begun』とかと比較すれば、内容の良さから言っても

安く感じるかも・・・