Christopher Neil 『Where I Belong』LP 1972年作

昨日紹介したThe Chucklesのリード・シンガーPaddy O’Neilの唯一のアルバムがこちら。

Christopher Neilだと長いですし、音楽ファンの間ではPaddyでまかり通っていますので、

この記事では彼のことを「Paddy」と呼ぶことにします。彼は70年以降、マルチなシーンで

活躍し、様々な分野で名を残してきました。一体何が本業なのか?と思う方もいらっしゃる

かもしれませんので、俳優業と音楽活動の2つに大きく分けて紹介します。その後にアルバム

内容と視聴動画がありますので、御時間が御座いましたら視聴と合わせて読んで頂けると嬉

しい限りです。

出生から俳優業まで

Neil家の次男として1948年に出生したアイルランド・ダブリン出身の彼は、学生の頃から

合唱部で歌っていたこともあり、歌唱力には自信があったそうです。The Chucklesではリー

ド・シンガー兼作曲を務めており、同時にバンドの看板として売り出されていました。

Rod Stewart風のイケメンPaul Goetzに対し、Paddy O’Neilは弟系アイドル的な立ち位置

で、女の子から熱狂的な支持を得ていました。その影響からなのか、ルックスにも自身が付

き、バンド解散後はSolo Singerと並行して俳優としての活動も始めます。ミュージシャンと

いう肩書き持つ彼は、ロック・ミュージカル『Jesus in Jesus Christ Superstar』に出演

し、演劇の舞台で俳優デヴューします。

  

その後、1973年に『The Sex Thief 』、1975年『Eskimo Nell』、『 Three for All』と立

て続けに映画出演し、1976年からはテレビドラマシリーズ『Rock Follies』でエピソード3

   

にDavid役で出演、1977年にはアダルト系コメディ映画『Adventures of~』シリーズの3部

作の内、2作で主演に抜擢されます。この2作品では、それぞれテーマ・ソングの作曲から演

奏まで彼が担当しており、77年『Adventures of a Private Eye』はNeil名義で「Private

Eye」、78年『Adventures of a Plumber’s Mate』は本人名義で「I’m Flying」の2曲を披

露してます。

※この2曲に関しては、明日にLP未収のシングルにする記事をアップするので、そちらで視

聴も合わせて紹介します。

   

さらにBBCの子供向けテレビ番組で1976年~78年の間に声の出演もされているそうです。

さぁ、以上がPaddyの俳優業としての活動です。70年代限定でしたが、演技の方も中々上手

でしたね。

Paddyの音楽活動

Paddyの音楽活動というのは面白いもので、他のアーティストへの楽曲提供やアレンジ・プ

ロデュースなどのサポート面では華々しい成功を収めましたが、The Chuckles時代を含め、

自身にスポットを当てた音楽活動となるとメジャーでの大ヒットはありませんでした。し

かし寡作ながらもアルバム・シングル共に内容の濃い作品を残しています。

当時脚光を浴びることがなかった個人名義の作品も、今では世界中で垂涎の的となっている

現状を考えれば、彼の才能が少なからず評価されていると言っていいでしょう。

まず1960年代中期から後期に掛けて活動していたThe Chucklesの解散後は、Solo Singerと

して活動を始めました。彼のSoloデヴュー・シングルは、「Christopher」名義で1969年の

暮れにリリースされた『We Will Rock You/ Any Dream Will Do』。同名義でもう一枚シン

グルを発表した後は、Christopher Neil名義で活動します。70年代に入ると俳優業の仕事と

二足草鞋に加え、作曲家として他アーティストへの楽曲提供などもあり、自身の音楽活動は

比較的ゆっくりペースでしたが、着実にアルバム制作の準備は進み、そして1972年に記念す

べき1st Album『Where I Belong』をリリース!

それと並行してCliff RichardやPaul Nicholasに楽曲提供をします。Paul Nicholasとは同じ

く俳優でミュージシャンということで親交が深く、彼の作品には全面的にサポートします。

Soft Rockファンなら「Heaven On The 7th Floor」でご存知ですよね。

  

そして1973年には彼がCliff Richardに提供した「Help It Along」が毎年恒例のBBCヨーロ

ッパ作曲コンテストで3位に選ばれます。70年代中期頃からは自身のシングルは単発にな

り、プロデューサー、アレンジ、バッキングコーラス、そして作曲など裏方の仕事が軌道に

乗り始め、仕事量が飛躍的に伸びSheena Eastonのプロデュースを皮切りにA-ha、Bonnie

Tyler、Celine Dion、Cher、Dollar、Gerry Rafferty、Leo Sayer、Paul Carrack、Paul

Young、Rod Stewartなどなど、大物アーティストのプロデュースまでこなす引っ張りだこ

の売れっ子プロデューサーまで上り詰めました。

しっかり解説していたら長くなりそうなので大分端折ってしまいましたが、俳優業と音楽活

動をどちらも両立してやっていたことは、実際かなりハードだったんだと思います。しかも

それなりに結果を残してきたのですから、松岡修造さんの様に本当にエネルギッシュな方だ

ったのでしょう。下記の動画(中盤辺り)では、彼の裏方の活動が見れる貴重なシーン。

Sheena Eastonに金切り声で発破を掛けています。う~ん、指導一つとって見てもパワフル

ですね~。



アルバム紹介

Paddyのサウンド傾向は大きく分けると3つ。The Chuckles時代のHarmony Pop期、70年

代初期のアコースティック・ポップ期、そしてそれ以降のMOR期。今作はSoft Rock的には

最良な風が吹いていた2つ目に当たる時期で、本人名義での1作目『Happy Head』で魅せた

アコギ・ポップの延線上にある楽曲に、ストリングスの導入と耳馴染みの良いメロディ、

そして少し鼻に掛かった甘くナイーヴなヴォーカルが加わり、Duncan Browneを彷彿させる

サウンド・アプローチになっています。

曲を選べばRock、Acid Folk、Pop、Jazzなど異なったサウンドが交錯してますが、基本的

には全編通して涼し気なアコギが鳴り響き、アメリカとは一味違う英国特有のポップ・サウ

ンドに溢れています。Folkほど素朴になり過ぎず且つRockほど激しくならず、そしてマルチ

・トラックを駆使した濃厚なコーラスなどからSoft Rock系SSWのアルバムとして大推薦し

たい1枚です。以下、収録曲になります。

Side-1

1 「Hymn」

2 「I’m Over You」

3 「Grey Day」

4 「Bishop Of My Soul」

5 「Song For Myself」

6 「People Are」

Side-2

1 「W.I. Song」

2 「New Year Revolution」

3 「If I Was Close To You」

4 「Back At The Flat」

5 「Penine Child」

6 「The Highway Home」

シングル・カットされた冒頭の「Hymn」はプログレ風の長い前奏で始まります。曲が静ま

り返った所でアコギに被せる様にして歌いだすPaddy。程無くして一気にRockに、そして再

び静寂へ。長尺ながらもドラマティックに様変わりする展開に圧倒されます。その余韻に浸

っていると、流れるように美しいメロディを持った「I’m Over You」が続きます。シンプル

な曲調な程Paddyの歌声が身に染みて伝わります。優しく繊細な声質は、続く「Grey Day」

で堪能できます。4曲目「Bishop Of My Soul」は、今作では異色なファンキー・ロックな曲

。一転してPaul McCartneyが書きそうなアコギ・バラード「Song For Myself」を挟み、

A面ラストを飾る「People Are」は、前半はブルースな弾き語り、中盤以降はストリングス

が添えられDuncan Browne風な作風に。

B面入るとキャッチーなアコギ・ナンバー「W.I. Song」で始まります。ドリーミーなメロデ

ィに思わず聴き入ってしまいます。後半のハーモニカはPaddyが演奏してます。続く

「New Year Revolution」はステレオ効果を駆使したコーラスが印象的。4曲目「Back At

The Flat」は、アシッド・フォークな1曲。サビでブルース調に一転しますが、これが非常に

カッコ良い。続く「Penine Child」どこか淋しそうに歌い上げるアコギ・メローな1曲。心

に沁みるバラードですね。素晴らしいです。

ゆいさんのおススメ

今作最大のハイライトは何と言ってもSide-2の3曲目に収録された「If I Was Close To

You」に尽きるでしょう!Olivia Newton-Johnが1972年にCliff Richardとのデュエットで

カバーもした大名曲ですね。Paddyの澄んだ歌声に清々しいアコギ・サウンド、そしてハッ

ピーで爽やかなメロディ、どこをとっても1級品。世の中にはこんな素敵な曲があるんです

ね。

もう1曲はアルバムのラストを飾るドリーミー・ポップな「The Highway Home」。

「If I Was~」と同様、モロSoft Rockな作風ですね。ついつい口ずさんでしまうキャッチー

なメロディには脱帽です。

最後に

もし彼の作風に気に入ったのなら、LP未収のシングル収集は必須。詳しく知りたい方は明日

の記事にご期待くださいね。