V.A. 『1967 CBC Song Market featuring Kiss The Wind』LP 1967年作

RCA Victor Company LTDとThe Canadian Broadcasting Corporationの共同提供により

実現したプロアマ混合作曲コンテスト。第一弾となる今作は、3000曲の中から選ばれた優勝

曲「Kiss The Wind」と、入賞したその他11曲を含めた全12曲から構成されたアルバムにな

っております。演奏はCBC・CTL界隈での著名なミュージシャンにより行われておりまし

て、注目すべき点や、この企画の内容についてを含め解説していきます。

下記に動画も用意してますので、是非視聴も兼ねて読んで頂ければ幸いです。

企画内容

世界中に住むカナダ人のみの作曲コンテストとして、当時話題になったそうです。何しろ

素人からプロも含めた誰もが参加可能なので、様々な地域や職業の方々から応募があったそ

うです。地域の方を見ていきますと、西はPrince GeorgeからDrumheller、Oakville、

Toronto、Verdun、Montreal、Halifoxまで。さらには、米国に引っ越したカナダ人から、軍

事遠征で海外に赴任中の方までと、いかに話題になった大会だったかがよく分かりますね。

そして職業は、主婦の方々から建設業、歯科医、現役のミュージシャンや獄中の囚人まで、

多種多様な人々からの応募があったようです。応募者がそこまで沸騰した理由は、何を隠そ

う優勝賞金の$2000!!当時の額にしたらその数倍に当たるのでしょうか??そうなると厳

正な審査が必要になってくる訳ですが、そこで立ち上がったのが米国の著名な作曲家の

Arthur Schwartz 、カナダの女性歌手Juliette Augustina Cavazzi、ジャズ界の大御所ミュ

ージシャン兼作曲家のRaymond Berthiaume、RCA Victorの名プロデューサーWilf

Gillmeisterの計4名。ジャッジを担当した彼らは、3000曲を超える新曲の中から優秀な作品

  

を選び抜き、選出された32曲はラジオで放送されることになりました。その中で、アルバム

用にさらに選び抜かれた全12曲が、このアルバムに収録されることになったのです。ちなみ

に優勝曲「Kiss The Wind」の作曲家は、全くの素人。Prince Georgeの工務店で働く22才

のBruce Barrieさんだそうです。

アルバム内容

今作は片面6曲ずつの全12曲の収録です。注目して頂きたいのは、選曲された楽曲群を歌う

シンガー達です。The Billy Van Singersでお馴染みのBilly Vanを筆頭に、The Jimmy Dale

Orchestra & Chorus 『The Sounds Company』に参加したRhonda SilverやTommy

Ambrose、そしてThe Laurie Bower Singers。彼らに至っては、1st Album以前の極初期の

   

1曲が聴けるという点において大変貴重な音源になってますね。以下に収録曲とシンガー達の

名前を記載しておきましたのでご参照ください。なお、作曲者に関しては素人も含まれてい

る関係で割愛させて頂きます。

Side-1

1 「Kiss The Wind」・・・Billy Van

2 「Life Is A Merry-Go-Round」・・・Cleone Duncan

3 「We’ll Walk Together」・・・Jim Pirie

4 「Once & For A Lifetime」・・・Vanda King

5 「Annie Is Back」・・・Tommy Ambrose

6 「I Care」・・・Eve Smith

Side-2

1 「I Need You So」・・・Norma Locke

2 「In The Worlds Of A Lover」・・・Tommy Ambrose

3 「I Saw It Happen」・・・Rhonda Silver

4 「Single oments」・・・Billy Van

5 「Sometime Girl」・・・The Laurie Bower Singers

6 「Gently」・・・Ken Steele

※「I Need You So」は、Johnny Burt作曲

※「Life Is A Merry-Go-Round」は、翌年1968年盤の優勝曲を書いたJohn Marier。



サウンド志向

全体を聴いてみるとどれもオーソドックスなスタイルを下敷きにした楽曲が多く、年代にし

ては少々古臭い音作りになっております。これは『1968 CBC Song Market』と比べると、

一体この1年で何が起こったのか?と思わざるを得ない程。決してレトロ感溢れるサウンドを

揶揄している訳ではないです。しかしながら、2作品共に参加しているThe Laurie Bower

Singersの楽曲を比較するとその差は一目瞭然。

ただ、オールディーズが好きな方には問題なく楽しめると思いますのでご安心を。

おススメの曲

3000曲の中から選ばれただけあって、どの曲もレベルの高い楽曲ばかり。どこに針を落とし

ても綺麗なメロディが流れている、といった印象を受けます。その中でやはり優勝曲の

「Kiss The Wind」は、到底22才の若造が作曲したとは思えないハイクオリティな1曲。

かなり渋いバラードですが、聴くほどに味わい深い大人の魅力がありますね。他の曲はと

いうと、キャッチーなメロディを持った「Life Is A Merry-Go-Round」や、Tommy氏の歌

声が見事にマッチしたポップな「Annie Is Back」や「In The Worlds Of A Lover」。

Rhonda Silverのロリータ・ヴォイスが楽しめる「I Saw It Happen」などのポップ志向の

楽曲群と、ジャズ系のメロー・バラード「I Care」や「I Need You So」などが聴き所で

しょうか。

ゆいさんのおススメ

一際美しいのが「Once & For A Lifetime」。Vanda Kingという女性歌手によるメロー・バ

ラード。名前から言って我々には馴染み深いですよね。この曲はコーラスこそないものの、

素朴で飾らないオーケストラをバックにしっとりとクールに歌うVanda嬢の歌唱が本当に

素晴らしいです。楽曲より歌声に魅了されてしまうという、この企画盤にしては本末転倒な

感想になってしまいましたが、そこはご勘弁ください。

そしてThe Laurie Bower Singers好きのゆいさんにとって譲れない1曲が「Sometime

Girl」。簡素にしてニュートラルなハモりをしていた音源を聴けたことに、まず収穫あり

です。楽しく、ソフト、垢抜けない良さがこの1曲に詰まってます。是非ご視聴を!

最後に

CTLのコンピ盤然り、素人からデヴュー間もない新人アーティストまで、万人に対してプロ

の音楽家への道を開拓すべく様々な企画盤を用意するカナダ音楽業界。こういったアプロー

チの仕方が、良いものを作り出す最適の環境を作りだし、それが作用して、この年代に質の

良い音楽を残せたのだと、私は思っております。